<あかのよる><くらきあさ> の系列の番外編。転入生本田菊と副寮長フランシスの話。













ある程度を案内し終えたのだろう。先を歩くフランシスが立ち止まり、漆黒の髪に着物を纏った、一風変わった転入生の方を向いた。


「まぁ、こんなもんかな・・・何か質問とかあるか?」


人好きのする声色で促してくる。副寮長である彼は、転入して間もない菊のため、授業や仕事の合間に学園内の案内をしてくれているのだ。(それだけを聞けば、たいそう人の良い人物に思えるが、怒らせると面倒らしい、との噂もあるからそう一筋縄ではいかないようだ)。と、突然フランシスが、あ、と何かに気づいたように声をあげた。


「いい忘れてたけど、学園ではおおっぴらな吸血はご法度だ」
「・・・おおっぴらはいけない、ということは、隠れていれば別に良いので?」


思ったことをそのまま訊ねると、フランシスは愉快そうに笑って、彼よりいくらか背の低い菊の顔を覗き込んだ。そして、顰めた声で、寮長さまだってやってる、と言いながら自らの首筋を指差す。その仕草で、柔らかな金の髪がさらりと零れて、首筋の肌が露になった。その肌には痕らしきものは全く見あたらないものの、つまりそういうことらしい。細めた青い目が、月光に悪戯っぽくきらりと光る。ちなみに、と、彼は姿勢をもどしながらつけたした。


「『寮長殿』の血はかなり良い味だともっぱらの噂だ」


言って、ウィンクをひとつ。――全くもって白々しいことだ。


「私のような新参者が、寮長殿の血のお零れを狙ったりなどしませんよ」


もう良い年ですしね。柔らかく笑めば、もったいねぇなあ、とフランシスが返した。そんなこといいながら、本当はその味を自分だけの秘密にしたいのだろうに。菊はひっそりと思ったが、口には出さない事にした。




















転入生Hの観察

































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題名が苦しすぎる。何か良い題思いついたら変えます。