<Je te vous> の英視点です。 「ずっとこうしたかった、って言ったら?」 背に感じるあたたかな肌と、からだに絡みつく腕。息を耳に感じたと思えば、すぐにくちびるが柔らかく、耳の後ろに触れた。まるで本当の恋人同士のようなその挙動に、イギリスはくちびるを振り払って、先の言葉を発した背後のフランスに視線をやる。ブルーの瞳はなんとも表現しえない笑みを湛えてイギリスを見詰めていた。敢えて表現してみるなら、甘い視線、とでも言えようか。 「はっ・・・誰が信じるか」 「あ、やっぱり?」 いつも通りに嘲ってやると、軽い笑い声と共に長い指がイギリスに触れてきて、愛しむように髪を梳き始めた。誰よりも数多くイギリスを傷つけてきた手が、今は馬鹿みたいな優しさで触れているのだと思うとおかしな気分になってくる。首をひねった体勢がつらかったので、もとの姿勢に戻った。それでも、髪を梳く手は止まらない。 「・・・じゃあ、ずっとお前が欲しかった、って言ったら?」 少しの沈黙の後、今度は先ほどとは逆の耳にそんな声が吹き込まれる。ゆるりと振り向くと、フランスは先ほどと同じように、甘い視線でもってイギリスを見つめていた。欲しかった。そんな情熱的な言葉を紡いだくちびるの、端は微かに上がっている。やさしく肌を廻る指先、脳髄に響くような声。これに絆されない奴も、そういないだろう。けれど、自分だけは絆されない、絆されてはならない。イギリスは己にそう、言い聞かせる。 「・・・それは俺も」 言ってそのブルーを見詰めると、フランスが満足げに笑った。イギリスは彼のこの表情が、世界で一番憎たらしくて、一番に忌々しくて、けれど世界で一番、色っぽいと思っている。お前、今の顔えろかったよ。思ったままに言えば、フランスの眸が更に甘ったるく細められて、 「それはお前も」 まるで本当に恋をしているように、囁かれた。胸焼けしそうなほど甘い声色で、恐ろしくなるほど情熱的に。恋しているだなんて、そんな訳、あるはずもないのに。 「なぁフランス?」 イギリスは両腕をフランスの首に絡める。絆されるな、騙されるな、裏切られる前に裏切れ。胸中でそう唱えながら、透き通るように青い眸を見詰めた。誘いに応じて、彼の手がイギリスの頑なな決意を蕩けさせるように背を廻るのを、感じる。同時に、なんだ、と問いかけながらの微笑。 ――おまえが、ほしい。そう、隣国の言葉で告げれば、どこまでも憎たらしい目の前の伊達男は、愉快そうにくちびるだけで笑んで。そしてこう、囁くのだ。 ******** はずかすー。 |