「ずっとこうしたかった、って言ったら?」



後ろからすっぽりと、裸の背中を抱きしめながらフランスが、訊ねた。そのままくちびるを寄せて、耳の後ろにくちづける。イギリスは、情緒のないことにそれを振り払って、フランスを不躾に見やった。


「はっ・・・誰が信じるか」
「あ、やっぱり?」


嫌悪感も露な嘲笑に、これはここでする表情じゃないだろ、と思いながらもその髪を梳く。イギリスは、再びフランスに背中を向けた。それでも髪を梳き続けるフランスに、特に何の反応もせず、黙ってされるがままになっている。




「・・・じゃあ、ずっとお前が欲しかった、って言ったら?」


もう一度、先ほどとは逆の耳に吹き込めば、イギリスは再び、今度はゆっくりと振り返った。少し首を傾けて、視線をフランスから外して考え込む。今の視線のずらし方はエロかった。フランスは思いながら、まだ髪を梳く。しばらくしてから、イギリスがさっきと同じようにすぅ、と視線を戻した。唇の端を上げる。潤んだ緑が色を帯びて、細められた。


「それは俺も」


くちびるから零れた言葉に、フランスは満足して同じように笑う。それを見て、イギリスが愉快そうにくつくつ笑った。


「お前、今の顔エロかったよ」
「それはお前も」


言えば、熱っぽく見詰てくる緑に、まるで本当に恋しているみたいな目だと、フランスは思った。そんな訳あるはずないのに。




「なぁフランス?」


イギリスがそのまま、両腕を首に絡める。絆されるな、騙されるな、裏切られる前に裏切れ。フランスは己に言い聞かせながら、髪を梳いていた手を、背筋にずらしていく。


「ん、なんだ?」


微笑で応える。世界一性質の悪いその猫は、くちびるが触れるか触れないかの距離で微笑んで。そして、囁くのだ。








Je te veux

































********
ジュ・トゥ・ヴ=おまえがほしい
騙しあう仏英。