「君たち、まだやってるのかい?」


パーティーに誘っても部屋を出ようとしないイギリスに、アメリカが呆れ顔で言った。彼らが変なゲームをしている、と最初に聞いてからもう、数週間がたっていた。もうバカンスも終わろうというときに、まだ勝負を続けているということは、ふたりはこのバカンス中この勝負をずっとやっていた、ということだ。ここまで来ると、もう呆れる以外の反応が思いつかない。


ここまで来て負けられるかよ、と、ソファにふんぞり返ったイギリスは言って、ブランデーのグラスを傾ける。そんなもんかい、と、部屋に入ってすぐ近くの壁にもたれたアメリカは肩をすくめた。色々と言いたいことはあったが、とりあえずはパーティーに彼を誘うことにする。


「別に会ったって、走って逃げればいいじゃないか。招かれてるんだろう?」
「・・・とにかく、あいつに会いたくない」
「会ったら負けるから?」


言うと、イギリスはきつい目でアメリカを見据えた。だって、そうだろう?アメリカは言って、からからと、けれども嘲るように笑ったが、彼を挑発してどうしたいのか、自分でもよくわからなかった。ただ、さっさとこのゲームを終わらせて欲しい、と自分が思っていることだけはわかった。どちらが勝とうがこちらには全く関係ないが、とにかく、早くこのゲームを終わらせて欲しかった。イギリスにしてもフランスにしても、せっかくのバカンスをこんなことでふいにするなんて、本当に訳がわからない。アメリカがここに来た最初の日、フランスのチャンスを邪魔したことを、彼は密かに後悔していた。


イギリスはブランデーのグラスをことりと置くと、豪奢な椅子から立ち上がった。わかったよ、行けばいいんだろ!?と叫んで、服を探しに奥の部屋へと入っていく。やがて彼が着替えているらしい音が聞こえてきた。


「・・・そういえば、今日は花火をやるらしいよ」


部屋からタキシード姿で出てきて、その姿のまま屈んで靴を磨いているイギリスの金髪を眺めながら言うと、あいつが口説くのに使うかも、という声が返ってくる。そういうつもりで言ったんじゃなかったのに。


「・・・君はいつだって、彼との勝負に夢中だね」


ぽつりと漏れた言葉が、なんだかとても子供じみて聞こえて、アメリカはそんな自分の言葉にどきりとした。イギリスが、あ?といいながら顔をこちらに向ける。聞こえていなかったらしい。そのことに安堵している自身が恥ずかしかった。


「何か言ったか?」
「何も?早くしなよ、パーティー終わっちゃうじゃないか」
「うっせーな・・・できた」


エスコートしようか、と冗談紛れに言うと、丁重にお断りする、と言う声と憎らしい笑みが返ってきた。


「シャンパンが出るだろうね」
「飲みすぎんなよ」
「それは君だろう」
「うるせー!」


言い合いながら、並んで同じホテルで行われるパーティーの会場へと向った。こうして話していても、彼の頭の中は勝負のことで一杯なのだと思うと、アメリカの胸に、酒を飲んだわけでもないのに、むかむかとしたものが残った。















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