やわらかな水に身体を浸して、その冷たさを身体中の皮膚で感じる。手に水を掬い、陽の光にきらきら光りながら零れ落ちる透明な水の感触を楽しむ。重たな水圧を感じながら、疲れ切るまで、ひたすらに泳ぎまわる。海にこんなにたくさんの楽しみ方を見出だしたのは、子どものころ以来だ。ボートに乗ってのんびりと海風にあたるフランスに、カナダがそう言うと、彼は、それがバカンスの良いとこだ、と笑った。


「そうやってたまには頭をからっぽにしなくちゃな。灰色の街で頭がかちこちになっちまうよ」


バカンスのために仕事して、仕事のためにバカンスをとる。それが人生だろ?


セラヴィー、と、フランスはまるでうたうように、そう言った。