今日も今日とて空はすっきりと青く、カーテンの隙間から入り込む陽の光に、カナダは気持ち良く目を覚ました。隣りのベッドのアメリカがまだ眠っているのを確認してから時計を見ると、朝8時。ちょうど良い時間だ。 着替えてからキッチンへ降りて行くと、髪を後ろでひとつにくくったフランスが、朝食を用意していた。フライパンの上のベーコンが、おいしそうな音をさせている。テーブルの上にはレタスやらラディッシュやらが並べられ、それからオリーブオイルの瓶が蓋のあいたままで置かれていた。フランスは、もうひとつのフライパンに油を引き、それを火で温めながらパンケーキの粉を混ぜていたが、すぐにカナダに気付いて笑いかけた。 「おはようカナダ」 「おはようございます」 「アメリカは?」 「まだ寝てます。イギリスさんは?」 「あいつなら庭に水をやりに行ったよ」 「何か手伝うことあります?」 「ああ、じゃあ、…」 カナダはフランスにいわれるままに皿を出したり、ミルクを用意したり、ヨーグルトにラズベリーのジャムをかけたりし、その間にフランスは、愛がどうだとかいった内容の歌詞の鼻歌を歌いながら、パンケーキを焼きはじめた。一枚目のパンケーキに気泡があらわれはじめた頃、やっとイギリスが庭から戻ってきた(毎朝の水やりは彼の日課で、彼曰く、「妖精たちに朝の挨拶をしている」のだそうだ)。彼はカナダに朝の挨拶をするなり、こう言った。 「アメリカはまだ起きてねぇのか?」 「あ、はい、たぶん」 「ったく仕方ねぇ奴だな」 ぶつぶつ言いながら、イギリスはカナダたちの寝室へと向かう。アメリカを起こしにいくのだろう。いつそう決まったのかをマシューは忘れてしまったのだが、ここに着てからいつからか、アメリカを起こすのはイギリスと決まっていた。そして毎朝毎朝、『起きろ』『まだ眠いよ!』という問答を飽きずにくり返すのだ。ほら、今日もまた「まだ寝たいんだよ!」というアメリカの声が、寝室からキッチンにまで聞こえてくる。それに言い返す、イギリスの声も。 フランスが、鮮やかにパンケーキをひっくり返しながらちょっと笑った。 「ったくアメリカも甘えたがりだな」 本当に、とカナダは思いながら、メープルシロップを棚から取り出した。 |