お初の後朝の話。例によって酒の勢いでうんたらかんたら(笑)の後、です。







朝、起きたら隣りに眉毛野郎が眠っていた。あの、なんとなくぐしゃぐしゃにしたくなる後頭部をこちらに向け、頼りないはだかの肩をむき出しにしながら。


「…あー…まじかよ…」


朝、寝室、快晴を予感させる陽が細くあたるベッドの上。寝転がったフランスの、後悔をたっぷりと滲ませたつぶやきに、身体を起こしてシャツを羽織ったイギリスは、こちらをちらりと見てからひとつ大きなため息をついた。最初の衝撃から数分。否、数十分はたったかもしれない。とにかく、ふたりともなんとか冷静になって昨晩のことを思いだし、それを事実だと認めることができるくらいには落ちついたころだった。


「…やっちまったなー」
「その言い方やめろ。思い出して気分が悪くなる」
「事実なんだからしょうがないだろ。ていうかさぁ、なんでよりによってお前なわけ?全然ときめかないんだけど」
「は?そりゃこっちの台詞だこの色魔野郎。なんでお前なんかとあんなこと」
「そんなの俺に聞くなよ」
「じゃあお前も俺に聞くなよ!」


なんだかすごく不毛な言い争いをしているような気がしてきて、フランスは口をつぐんだ。こんな爽やかな朝なのに、なんでこんな眉毛と言い争いなんかしてなきゃなんないんだ。いつもだったらとっくにカフェオレの準備でもしているところなのに。あーなんかほんと、昨日の自分殺してやりたい。そう考えていたら、イギリスが、


「くそ、昨日の自分殺してやりてぇ」


思いっきり苦々しい顔で言った。お前俺の考えてること口に出すのやめてくれる?とはさすがに言えなかった。この状況ならイギリスでなくたってそう思うだろう。なにしろフランスもそう思ったのだから。


その後イギリスは水でも飲もうと思ったのか、ベッドから立ち上がろうとした。が、もろもろの疲れのためか、立ち上がってすぐに、ふらついてしまう。うわ、と彼は自分でも驚いたような声をあげて、結局すぐにベッドに戻ってしまった。


「おい、大丈夫か?」


思わず身体を起こして声をかけると、イギリスはうるせえ、とこちらを見もせずにいう。


「大丈夫にきまってんだろ」
「ふらついてなかったか?」
「目掠れてんじゃねぇの。ていうかそういうのキモいからやめろ」
「は?」
「お前が変に優しいとキモい」
「…お前さ、俺のことなんだと思ってる?」
「くそ髭ワイン野郎」
「……」


まぁ、この調子なら特に心配をする必要もなさそうだ。というより、あのイギリスが、あのくらいの運動で本格的にへばったりするわけないか(相手もこの紳士的で優しいお兄さんだったわけだし)。精神的にはどうだかわからないが、それはフランスにしても同じことだ。まあ実のところ、フランスはこの状況にあまり困惑していない自分に結構困惑しているのだが。・・・にしても、こいつ、けっこう良かったよな。フランスはのんきに心中でつぶやいた。最後のときのあの顔は、ちょっとなかなか忘れられそうにない。


「で、どうすんだよ、これから」


もう一度ベッドに座りなおしたイギリスが疲れ切った顔で言う。これからどうするか、なんてこっちこそが聞きたい。選択肢としてフランスの頭に浮かんだのは、@とりあえず絶交してみる、A責任を押し付けあって戦争、B責任をとってつきあう、Cむしろ結婚 の4つだった。正直なところ、どれも遠慮願いたいものばかりだ。ていうか誘ったのお前だろ。あんな顔してしがみついてきたじゃん。喉まででかかった言葉を、フランスは飲みこんだ。結局こっちもそれなりには乗ってしまったからこそ、こんなこと――これまでなんとかかんとか保ってきた、まあ最高とはいえないが、悪いともいえなかった関係がぶち壊しになってもおかしくないような状況――になっているのだ。フランスは、思い付いたいくつもの台詞の中から、結局一番無難そうなものを選んだ。


「・・・取り敢えず、朝食でもたべる?」


イギリスはしばらく黙っていたが、やがて、そうだな、とつぶやき、


「ベーコンはかりかりにしろ」


そう命令してきた。













Le matin


















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初めてってすごく重要なテーマな気がするのに、めちゃ軽くなってしまった。なんかドライな感じにしたかったんだよ・・・
裏テーマはイギーに優しくない兄さんだったりする。需要あるのだろうか。

題名、「朝」にしようとしたら前にも書いていたのでとりあえず仏語にしました(てきとう)。