なにかの動くごそごそという音がして、フランスは心地好いまどろみから覚醒した。秋のはじめ、朝ははやく、まだ太陽すら顔を出していない。肌寒い空気を感じながら、目を凝らして音の正体を探す。夜明けの直前、その薄暗い部屋の中に、金髪が微か光るのを認め、彼がもう身支度をしはじめたことを知った。はえーよエロ紳士。朝は心行くまでゆっくりするもんだろーが。口の中でつぶやく。「エロ紳士」はダブルのベッドの端に腰掛け、こちらに背を向けている。普段の彼に似つかわしくない緩慢な動作で、その金髪にくしゃりと一度、手をやった、その拍子にひっかかっていたブランケットがはらりと肩から滑り落ちた。はだかの背中が薄い闇のなか、ぼんやりと浮かびあがる。まっすぐに背筋をのばした、骨の少し目立つ背中――昨夜、闇の中に艶かしく反って誘っていた、 その背中に触れなくては、という訳のわからない衝動に襲われて、フランスは唐突にその上半身を起こした。途端襲い掛かってきた肌寒さに背がぞくぞくしたが、それを我慢して彼に近づく。イギリスがようやく気づいて振り返ろうとした瞬間に、素早く後ろから抱きしめた。うわっ!と色気のかけらもない声をあげた彼の、驚愕にびくっとすくんだ背中が、腕の中で昨夜のように反る。肩甲骨がよりはっきりと浮かび上がり、きれいに背筋が反って。ああ、これだ。ひとり納得して、てめぇ何してんだよ放しやがれとかなんとか叫ぶ彼が肘鉄を食らわすより早く、耳元に囁いた。おい、エロ紳士。 まだかえるには、はやいんじゃねぇの? ******* はじめて書いた仏英をちょこっと修正。 |