「・・・お前ら、ちょっとは隠そうとか思わないあるか?」
「えー、別にいいじゃん」
寝室に朝食を届けに行ってみれば(召使状態なのだから仕方ない)、中国の家で一番豪華なその寝室にはありありとその痕跡が残っていた。もう何回目だろうか。中国は呆れ果てた視線を寝台に腰掛けるフランスに送ってみたが、上半身裸の彼はふっと笑うだけだ。遅寝の朝の青の瞳は眠たげだったが、同時に満足げに煌いていた。
「・・・・・・」
盛大にため息を吐く。いつもと同じで良いあるか、と力ない声で訪ねると、んー、と適当な返事が返ってきた。その拍子に、フランスの向こうに、白い枕に散らばった金髪を見つけてしまった。中国はとにかく見なかったことにして、大人しく朝食を置くことにする。と、寝台の奥から、んん、という微かな呻き声。どうやら女王様のお目覚めらしい。喉から漏れた声は確かに眠たそうだったが、端々には甘さが滲んでいるように聞こえた。
「おはよう、イギリス」
中国が何を言うまでもなく、フランスが寝台の上で体の向きを変え、イギリスに覆いかぶさるように顔を覗き込んだ。フランスが背を向けた拍子に、肌に付けられた爪痕が目に飛び込んでくる。思わず中国は半目になったがフランスは当然気づかず、からだは大丈夫、などと話しかけている。大丈夫だ、と応える擦れた声と同時に、小さな口付けを乗せる音がした。それから、声かすれちゃったな、というフランスの声。そりゃそうあるよ、と、中国は口の中で呟きながら、最後の器を置いた。・・・にしても。
「・・・若いあるねー」
心の中で呟いたつもりだったのだが、いつの間にか声に出していた。しかし幸いなことにふたりには届かなかったらしい。見れば、イギリスがフランスの手を借りてようやく身体を起こしたところだった。だるそうに息を吐き出し目を擦っている。童顔な彼に似つかわしい幼げな姿だったが、鎖骨のあたりの白い肌には赤い痕が残っているのがアンバランスだった。・・・それにしても、こうしているのを見ると、あの凶悪さは一体どこへ行ってしまったのだろうと不思議でならない。
(・・・もう勝手にするよろし)
イギリスの寝乱れた髪を、フランスの手が馬鹿みたいな優しさで撫でているのを横目に、朝食の準備を終えた中国は部屋の扉へと向う。扉を開けようやくこの甘ったるい空間から抜け出した。またも息を吐き出してから、ふと振り返れば、閉まる扉のその隙間から、吸い寄せられるようにくちづけているふたりの姿が見えた。
朝
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中国と同じ気分になって書きました。ラブラブすぎて違和感・・・しかも迷惑なこと極まりない。これで実際仕事になるとお互い情け容赦ないふたりが良いと思います。
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