絵の具を塗りつぶしたような濃密な青、太陽の光を反射してきらきらと光る薄い青、やわらかな色合いで、安らかにゆらゆらと揺れる青。高台から見下ろした先、その海には、様々な青が見てとれた。


きれいだろ?


イギリスの隣りに立つ彼が、自信たっぷりに、言う。何か嫌味を返さなくちゃ、と思ったのに、目の前に広がる青の数々にとっさに思い付かず、イギリスは結局黙ることにする。だがその行動だけでも、長年隣りに居座り続けている彼には、イギリスの本意が通じたらしい。ふっと、彼の視線が柔らかくなる。


真夏になったらまた来いよ


やっぱりバカンスはここに限るしな。そう、やはり自信たっぷりに言い切ったフランスを見やる。誰がお前のとこなんか。そう言い返そうとしたのに、海をまっすぐ見つめるその瞳が、思いの他安らかだったものだから、拍子抜けしてしまい、思わず素直にうなずいてしまった。その返答に対して、フランスは一瞬驚いたようにイギリスを見やる。その反応を見て初めて、イギリスは先程の自分がどんな返答をしたかを思い出した。頬が熱くなるのを感じる。何か言い訳をしようと口を開き――しかしその文句は結局口を付いて出てはこなかった。次の瞬間、フランスの瞳がなんだかやたらと嬉しそうに細められたから。


お兄さんとこ大人気だから、はやめにホテル予約しろよ


浜辺の陽で伺った、その青は、ひどくやさしげな色をしていた。







やさしいあお










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次はめりかの予定。