寮ネタ。イギリスと日本が同室。フランスはスペインと同室。実はタ○ミくん○リーズネタ。わからなくてもたぶん読めます。


















[225号室] 





あ、いけね。もうすぐあの鬼生徒会長さまが帰って来る時間だ。勝手に私とアーサーさんの部屋にやってきて、勝手にアーサーさんのベッドに寝転がり、勝手にぽつぽつと惚気話をしていたフランシスさんが、壁にかかっている時計を見て言う。もう帰らなくちゃなー、という気の抜けた声と共に、彼はアーサーさんのベッドから起き上がる。証拠隠滅のためか、ベッドの皺を直しはじめた。そうしながら、あ、という呟き。彼は私の方を見て、


「――あいつには、内緒、な?」


ウィンクをひとつして、それから、ドアへと向かう。と、彼はアーサーさんの机の上においてあったボードレールに気がついた。あいつ、こんなの読むのか。ちょっと笑って、それをそのまま手にとってしまう。せっかくベッドを綺麗にしたのに、証拠隠滅どころか、わざわざもっとわかりやすい証拠をつくったのだ。けれど私はその理由を知っていたので、黙っておいた。フランシスさんは満足げに微笑むと、ひらひらと手を振って、ボードレールと共に部屋から出ていった。








*********








「あいつ・・・!」


今日も今日とて多忙な一日を送る我等が生徒会長アーサーさんは、今朝私に告げていた時刻よりも大分遅れて部屋に帰り着いた。しかしその鋭い洞察力でもって、部屋に入ってくるなりすぐに、異変に気づいた。読みかけのボードレールが、机の上から忽然と姿を消したのだ。そして部屋には代わりに、微かな残り香。部屋にいた私が事情を説明するまでもなく、アーサーさんは悪戯をした者の正体を見破った。


「あいつ、ただじゃすまさねぇ・・・覚悟しやがれ!」


激怒した彼は勇ましい声と共に、部屋を飛び出してゆく。フランシスさんのもとへ、文句を言いに行くのだろう。そして、――今夜は戻ってこないだろう。


(・・・やれやれ)


どちらともなく機会をつくっては逢瀬を繰り返す同室の生徒会長とその恋人に、思わずひとつ息をついてしまった。仕方なく私は、ネタ用のノートを机から引っ張り出すことにした。




















ある男子寮の夜の一幕



































おまけ



[237号室]  


「それ、どうしたん?」


ふらふらと部屋を出てから小一時間ほど。どこからか帰ってきた同室のフランシスは、見覚えのない本を手にしていた。表紙にはボードレールの文字。なんとなく嫌な予感を感じながら、訊ねてみる。フランシスはこちらを見ようともせず、んー、これはね、と言ってちょっと笑いながら、ぱらぱらとページをめくった。


「ちょっと女王様から拝借してきましたー」
「・・・あー、そ・・・」


返答に脱力してしまった。ああ俺今夜どないしよう。またロヴィーノのところ?まぁそれはそれで楽しみやけど。思ったところで、ガツン、という音と共に、ドアが突き破られたような勢いで開いた。音の正体など考えるまでもない。この乱暴者。思ったが口にはしない。どうせ言ったところで、聞こえもしないだろうから。


「てめぇ、よくも・・・!」
「えーなんのこと?」
「とぼけんじゃねぇよっんだよその右手の本は!」
「うおっちょっいきなり脚!?」


久方ぶりの逢瀬を楽しみ始めたふたりに思わずため息が漏れてしまった。こっそり開きっぱなしのドアから廊下へと身をすべりこませる。そっとドアを閉める。罵声が少しだけ、遠のいた。


(どう考えても損な部屋わりや・・・)


けれど、どうしようもない。アントーニョは少し迷って、結局仕方なく、階下のロヴィーノの部屋へと向うことにした。






*******

むしろおまけがメインである。これは是非逆バージョンを書きたいところ。