事後です、ご注意!











「っ、はぁ・・・」


荒い息を鎮められないまま、イギリスはぐったりとくず折れた。まるで縋るようにアメリカの胸のあたりに腕を置いて、興奮を抑えようと、くちびるを噛んで俯く。彼が必死に劣情を抑制しようとするこの瞬間が、アメリカはこの上なく好きだった。


なよなよと力の入らない様子のイギリスの、背に腕をまわせば、彼はほっとしたように、息を漏らす。そのままアメリカの上に、寝るように倒れこんだ。心地好い重さにアメリカは頬を緩ませて、指で彼の髪を弄る。息を落ち着かせようとしていたイギリスと、目が合った。はっきりと余韻を残している、きらきらと潤んだ目は、かつてなら決して見得なかったものだ。なんて、きれいなんだろう。


「・・・疲れた」
「そうかい?君は本当、体力がないな!」
「てめぇと、比べんな・・・!」


語尾が微かに擦れた声に、ほんの少しの罪悪感と、それ以上の満足感が、アメリカの胸を潤す。思わず笑って、そしてまだ熱を残す頬にキスを乗せた。イギリスは一瞬くすぐったそうに身をよじったが、かまわず、額にも、鼻の頭にも、キスを繰り返した。イギリスがだんだんに、落ち着きを取り戻すのがわかった。気だるげに鈍かった緑の瞳に、冷静な光が戻る。


「・・・・・・!」


息がもどって、冷静になったイギリスが、アメリカの腕の中、抵抗もなく甘える自分にはっと気づいて恥ずかしげな表情になる。いつものようにアメリカから離れようとし始めた。これは毎度毎度のことだ。彼は、恥ずかしがりやで、意地っ張りで、無駄なほどに誇り高いから。


「どうしたんだい?」
「・・・べつ、に・・・重いだろ、」
「全然重くないけど」


言っても、彼はゆっくりとアメリカから離れていく。この瞬間が、寂しくないといえば嘘になる。遠ざかるぬくもりにほとんど恐怖に近い感情を憶えるのも、どうして、と問いかけたい気持ちに苛まれるのも。けれど、なにもかもを投げ捨ててアメリカに縋るようなイギリスを、アメリかが望んでいないのもまた事実だった。彼はちょっとくらい戸惑っているのが、良い。変に甘えられても、勝手がわからなくて困るのはこちらだろう。


イギリスがアメリカから降りたのち、殆ど間をおかず、腕をシーツの上の彼の身体に絡ませた。すっぽりと抱き締める。また、額にキスする。彼の匂いが満ちて、そして彼の存在が、アメリカの胸に満ちた。彼は昔と比べ、すっかり小さくなってしまって、しかも昔見ていた彼と今みる彼はやはり、全くもって違っていて。けれど、その日向と緑の匂いだけは、変わらない。優しく抱き締めてくれたときと同じ安心感が、アメリカの胸に満ちた。なんて、大きな力なんだろう。彼はアメリカに対して、他の誰もが持ち得ない、不思議な力を持っている。どんなに理性で拒絶しても、奥底の部分で彼を拒む事ができないような、そんな力を。これが何という名の感情なのか、ということなど、どうでも良いことだった。ただ、史上でもそう無いんじゃないか、とうぬぼれたくなるほどの縁が、アメリカと彼の間にはあるだけで。


見れば、イギリスは揺れる瞳でアメリカを見上げている。こんなにも不安げに揺れる彼の瞳を、見る日が来るなんて思わなかった。愛に臆病な彼を安心させようと、アメリカは抱き締める力をすこし、強めた。かつては何もかもに憧れを抱かずにはいられなかったイギリスの、こうした柔らかい部分こそが、アメリカにとっていとしい。その瞳を見詰めれば、イギリスのまつげが、ふるふると震えた。


「眠って、いいよ」


きっと今頃、どうでもいいこと(けれど彼にとっては大切なことなのだろう)をぐるぐると考えているであろうイギリスの、髪をまた、撫ぜながら、促した。イギリスはそれをすると、いつも安心したように目尻が下がる。やさしげに、ねむたげに――それはきっと、誰よりも強くあろうと生き続けてきた彼の、最も無防備なすがた。


「おやすみ・・・イギリス」


すぅ、と眠りへ落ちるイギリスを見守る。瞳を閉じた幼顔、年上の彼の、そのくちびるに、アメリカはキスを、再び乗せた。


















情の紡がれる音


















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意外に甘くなってしもうた。アメリカがとっても素直な子に!(笑)