事後です、ご注意!











「っ、はぁ・・・」


荒い息を鎮められないまま、アメリカの胸にくず折れた。触れた肌は熱く、その心地良さに、ただでさえ働かない頭の、思考が遮断される。もう身体を支えられない。朦朧とした頭で思った瞬間に、腕が背にまわった。力強く抱きすくめる腕に、ほっと息を吐いてしまった。


腕で自分を支えられなくなって、全体重がアメリカにかかる。けれども彼は、まるで重さを感じていないような表情だった。そのまま、息を落ち着かせる。アメリカの指が、髪を撫ぜた。


「・・・疲れた」
「そうかい?君は本当、体力がないな!」
「てめぇと、比べんな・・・!」


罵ろうとした声が、擦れてしまった。はは、と笑ったアメリカが、頬にくちづけてくる。額にも、鼻の頭にも。されるがままになった。じわりとしたあたたかさが胸に広がる。いけない、この心地好い波に、流されてしまう。何の逡巡もなく身を委ねそうになって、しかしそうする直前に、そのことに気づいた。


「どうしたんだい?」
「・・・べつ、に・・・重いだろ、」


全然重くないけど、と、けろりと言ってのけた彼の上から、白いシーツへと降りた。馬鹿な考えだと、自分でもわかっている。それでもまだ、イギリスは全てを彼に明け渡して、甘えることができなかった。まだ、そこまで自分は弱くなっていないのだと思いたいのか、あの子供に、と思うとプライドが許さないのか。たぶん両方なのだ。弱さと甘えは違うと知っていても、まだ、感情のままアメリカに甘える前に理性が働いて、逃げてしまう。アメリカはたぶんそれを知っていて、けれども黙ってくれている。昔と同じだ。同じように、結局のところはアメリカに、甘えているのだ。だから、またも彼がイギリスに飽きれて、どこかへと去ってしまうのでは、と、少しだけ、恐い。


冷たいシーツに身がすくんだが、すぐに熱いアメリカの腕が身体に絡みついてきた。すっぽりと抱きしめられて、また、額にキス。ぼんやりと見上げた瞳は優しく、包み込む腕は熱い。イギリスは知っていた。こうして逃げようとしてはいても、どこまでも追いかけてこまかなことを気にせずに抱き締めてくれる、この腕がなかったら、きっと自分はおかしくなってしまう。それなのに、素直にそれを表に出すことができないなんて、なんて厄介な性格なんだろう。


「眠って、いいよ」


ぐずぐずとそんなことを考えてしまうイギリスを、彼は知ってか知らずか(たぶん、知っているのだろうと、イギリスは踏んでいるが)アメリカは眠りを促すかのように、イギリスの髪をまた撫ぜる。囁く低い声の心地好さに、瞼が勝手に降りていく。それは俺が言ってた台詞で、髪を撫ぜるのだって、昔は俺がやってたのに。思って、意識を総動員して抵抗しようとしても、それはできないことだとわかっていた。胸一杯に、アメリカの匂いが満ちる。アメリカの存在が満ちる。理屈では説明できないような力を、アメリカの存在は持っている。・・・もう、抗う事すら、できない。


「おやすみ・・・イギリス」


かなわない。本当に、アメリカにだけは、かなわない。昔も、―――今も。












情の満ちる音


















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別に「情の裂ける音」と対になってるわけでもないんですけど、なんとなく題名を似たものにしてみました。ぐるぐる考えても結局安心して眠るイギリスがかきたかったんだと・・・思う、よ・・・!米英はすごいよね、なんか・・・愛だよねって思います、ほんと。まぁ妄想なんですけど(笑