仏と独がちゅーしてるので気をつけてください。 一瞬、何が起こったのかわからなかった。唇をちろ、と舐めていたそれが、口の中に侵入してきて、そしてそれは驚くほど器用にドイツの咥内をさぐった。そのキスの仕方は今ドイツにそれを仕掛けている彼に対するイメージからすると、少し意外で、ドイツは驚いた。思ったよりも、少し乱暴で、男っぽい感じがした。もっと、ねちっこい感じかと思っていたのに。そんなどうでも良いことが頭の中を廻る。とどのつまり、ドイツは動揺していたのだった。 フランスは唇を離して、濡れたそれのまま、にぃ、とその端を吊り上げた。頬が少しだけ赤らんで、酔っていることは一目瞭然だ。しかし、いくら酔っ払いの行動とはいえこれは、と一瞬呆然としてしまったドイツに、お前さ、と視線を滑らせる。 「下手だな」 何が、とは言わずとも知れていた。その言葉に、ドイツは今自分が酔っ払いを相手にしていることを思い出して、そりゃお前に比べればそうだろう、と思っても口には出さないで置いた。まともに相手などしても、意味なんてないのだ。フランスはワインのグラスに手を伸ばす。持つ、というよりは指を絡めるようにしグラスを持ち、それから唇をつけて赤の液体をちろりと嘗める。グラスを手にしたまま、今のさ、とフランスは言った。 「今のさ、あいつのやり方なんだぜ」 下卑た笑みでも浮かべるのだろう、と推測していたドイツの予想を裏切って、フランスは何処かをぼんやりと見詰ながらぽつりとこぼす。酔っ払いの戯言の癖に冴え冴えと響いたその言葉に、ドイツがフランスの表情を伺えば、彼はゆっくりと振り向いた。 「乱暴だよな、・・・ってお前に言っても通じなさそうだけど」 にか、と笑って、「もっとお前も飲めよ、相変わらずノリ悪いなお前」と瓶を手にワインを注いだ。 「もうそろそろやめておけ、俺は送らんからな」 「いや、お前は送ってくれるよ」 即、断言される。面食らったドイツにかまわず、フランスはグラスに残ったワインを一気にあおって乱暴にグラスを置き、そしてカウンターにだらしなく突っ伏した。 「おい、寝るな」 さすがにこれは困る、と肩を掴んで揺らす。フランスと、薄暗い照明の所為でできたフランスの影と、長めの金の髪がゆらゆらと力なく揺れた。フランスはうう、と呻き声を漏らしながらゆるゆると顔を起こす。瞳がどろどろだ。酔いの所為だけか、―――そんな訳がなかった。しっかりしろ、と両肩をつかんで真っ直ぐその目を見れば、フランスはふ、とくちびるだけで笑った。ドイツに向かってではなく、おそらく自身に。それから視線を流して、あーあ、とため息を吐き出した。 「執着とか、未練とか、そういうの、俺大嫌いなんだよね」 「――だろうな」 「それから、あいつも大嫌いだ。あいつがあんな奴に付き従うずっと前から、大嫌いなんだ」 「・・・知っている」 「あいつなんか勝手にしてれば良い、勝手にアメリカにくっついて行けば良いんだ・・・『ヨーロッパじゃない』んだから」 「・・・・・・」 「ああ本当ヤダヤダ、なんで、なんで――」 なんで、 フランスは顔を酷くつらそうに歪め――誇り高い彼はドイツからそれを隠すように、俯いた。表情は髪に隠れて窺い知れない。しかし、何かを堪えるように引き締めた唇から、なんで俺こんなにあいつにこだわってんだろ、という搾り出すような声が漏れたのが聞こえた。 隠し得ず、 認め得ぬ、 ******** 一応戦後な設定。 ご本家の仏の国紹介にある「性格はプライドが高く」を一応意識してみた。 英は分野によっては「ヨーロッパ」に入らないことがあるそうです。 |