見たところ、アメリカはかなり参っているようだった。この体力自慢の人がこんなに、と思いながらも、これが覇権国というものかもしれない、と、日本は思う。自分には理解できないことだ。アメリカの兄とも親ともいえる、彼ならば今のアメリカの気持ちもわかってやれるのだろうか。


アメリカさん。呼んで、彼が寝転がるソファに近づいた。ぐったりと身を沈ませて、右腕で目の辺りを覆うようにしてため息をついた世界一の大国を見て、なんだか酷く哀れになった。


「い・・・あ、日本か」


近づいた日本に気づいたアメリカがはっと起き上がって、意識して元気そうな顔をしようとした。その姿を見て、日本は胸が、修辞などで無く、本当に、痛くなるのを感じた。もうやめて。自分はなんでもないのに、思う。青ざめた笑顔を作って、「大丈夫だ、この問題だってすぐ終わらせて見せるよ、なんてったって、俺は世界一の国だからな!」と言って見せたアメリカをこれ以上見たくなくて、思わずその頑強な体を抱きしめる。


「・・・え、?」


アメリカの声は、驚きで満たされていた。それはそうだろう、と思いながら、日本はすぐに自らの行いを後悔した。こういう扱いを、彼は嫌って独立したのだろうに。こんなにちいさな自分に、慰めるような真似をされて、きっと彼は気分を害しただろう。差し出がましい事をしてしまった。


日本は体を離して、――正確には離そうとして。今度は日本が驚く番だった。アメリカは、日本が体を離そうとしても、その小さな体に縋るように、弱々しく肩の辺りに腕を絡めたままだった。驚いた日本が動けずにいると、今度は抱きしめられる。それきり、彼は、動かなくなった。


どく、どく、というアメリカの心臓の音が、肌から骨へ、そして日本の心臓へと伝わる。アメリカは何も言わなかった。いつもの彼を知っていれば、本当に彼なのか、と疑ってしまうくらいに長い間、何も言わなかった。日本は抱きしめられたまま、どうすることも出来ず、仕方なく、ただ次のアメリカの行動を待つ。じっと、そのままに、待って―――


やっと、アメリカが、表情の見えないまま、ちいさく、ねぇ、と、息とも声ともつかぬ音で言った。



「ねぇ、キスしてよ・・・昔みたいに」



日本は目を見開いた。



「ねぇ・・・」



ぎゅ、と強めに抱きしめられた。甘えるように、鼻を擦り寄せられる。包み込んでくれる何かを求めて苦しそうに足掻く、目の前の男が哀れで仕方なくなった。自らそれを拒絶し、それでも、今なおそれを求めて。いや、今だからこそ、求めているのかもしれない。不器用で、可哀想な、ちいさなアメリカ。そう、日本は思ってしまった。同時に、なぜかちょっとだけ、泣きたくなった。



「・・・」



日本は泣きたい気持ちを抑えて少しだけ笑い、慣れないキスを、アメリカの額に乗せてやった。そうでもしないと、本当にアメリカは参ってしまいそうだったから。アメリカは、目を閉じていた。キスを受けた彼は、まるでちいさな子供のような表情で。そうしてアメリカは、安らかにちいさく、かの名を、呼んだ。


















Kiss me,my dear

































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日本は米が英と日を間違えて甘えてると思ってるけど、米は日だってわかっててやってます。米は英にはこんなことできなくて、だから日本だってわかってるけど言ってしまったって感じ。これ米視点書こうかなぁどうしよう。