――キス一回につき、ショコラひとつ。どうだ? ――OK、受けてやるよ ちゅ、という小さな音を立てて、フランスの膝の上に乗ったイギリスが、フランスの額にくちづけた。柔らかなくちびるの感触、惜しむようにゆっくりと離れるそれに、フランスはいい子、と、満足げに笑んだ。ネイビーの小さな箱にまるで宝石のように並んでいるショコラの、ひとつを取る。くちびるを離したイギリスは、眉を寄せて、期待をどうにか抑えようとしている。けれど、その緑の眸は、見た目も味も甘美なスウィーツを待ち侘びて、とろりともの欲しそうに光っていた。その表情を見たフランスの笑みが、よりいっそうの色を帯びた。 「はい、じゃあご褒美」 「…ん…」 フランスのゆびに挟まれた、小さく、まろやかな曲線を描いたトリュフに、イギリスが舌を伸ばす。表面のほろ苦い粉を舐め取って、まるでせがむように、何度か舌先でそれを突き。フランスが指を離したそれをくちびるの中へと迎え入れた。 「…うまい?」 とろりと溢れ出た芳醇な匂いの液体に、イギリスが目をちょっと開いた。 「中がとろとろしてる…?」 「コニャックが入ってる」 言うと、イギリスは、美味い、と、素直に頷いた。フランスはそれはなにより、と、笑み、お前のキスも、悪くなかったよ、と言う。イギリスは、それは良かった、と笑んだが、彼がその答えに満足していないことは、すぐにわかった。 「次は、んー、じゃあ唇に、ちょうだい」 「…どっちを?」 「軽い方」 ショコラに酔ったようにとろりとした眦の――けれどその中にはフランスを出し抜きたいと言う感情が渦巻いているのがわかる――イギリスは何も言わずに、フランスのくちびるに、己のそれを柔らかく押し付けた。先ほどのトリュフの、ほろ苦い香りと、コニャックの匂いがフランスにも伝わった。そしてまた、ゆっくりと離れる。 「ん、じゃあ、その横のガナッシュのをあげる」 イギリスはフランスの膝から降りずに、テーブルの上の箱からショコラをとった。まるで宝物をとるように、優しく。そのなめらかな形をじっと見詰めてから、くちびるへ。外側の薄いビターチョコレートの中の、柔らかなガナッシュが舌先にとろける。ショコラに酔いしれるように、イギリスが息を漏らした。赤いくちびるから濃厚なショコラと、アーモンドの香りが漏れる。少しの間持っただけでも体温でとろけて、指についてしまったショコラを、イギリスは舌で丁寧に舐め取った。 「…で、最後の一粒。とっておきだぜ?」 イギリスが全てを飲み込んだのを確認してからフランスが言う。 「これはすぐにお前にやるよ。――だから、俺にもくれよな?」 「…どうせそんなことだろうと思った」 イギリスの背を撫でながら低く囁いた言葉に、少し呆れた顔をした彼は、しかしそういっただけで否定はしなかった。その反応に気を良くしたフランスが、お前だってわかってて乗ったんだろ?と、その髪をいとおしげに指に絡めると、イギリスは、子供のように幼い顔に、勝気な表情を浮かべた。 「だって、・・・ほしかったから」 「何が?」 「ショコラが」 「ショコラが?ショコラだけ――?」 自信と確信に満ちたフランスの問いかけにイギリスは、馬鹿じゃねぇの、と言ってちょっと声をあげて笑った。恋人同士のようなやり取りに、フランスもまた喉の奥で笑った。ふたりの間にショコラの匂いが満ちる。羽が触れるようなくちづけを幾度か、どちらともなく交わした。 「ったく、しかたねぇな」 イギリスがフランスの膝の上で、残りの一粒をくちびるに含む。むせ返るほどに濃厚な香りがくちびるの中、満ちてゆくのを感じながら、イギリスはまるで恋人に甘えるように、フランスの首に腕を絡めた。イギリスが見上げたブルーも、そしてイギリス自身の緑の眸も、刺激的な甘さへの期待に、疼くように潤んでいた。そっとフランスにくちづける――熱くなった舌の上でとろけるショコラは、これまで食べたどれよりも甘く、どれよりもなめらかで、どれよりも――― おひとつ、いかが? これまでで一番恥ずかしかった・・・(いつもとおんなじじゃんというツッコミはなしで!) これ書くために、もらってきたフランスとかベルギーとかイギリスのチョコレート屋さん(だいたい法外な値段。ふたつで3000円とかあった!!)のパンフレットを読みまくったら、おなかすきました。んで12こ入り100円のチョコを食べた(貧乏!)。三人称ってどうやってかくんですか。 |